フランス人男性は一途か、浮気者か?(2):一夫一妻制の重み

最近日本では、未婚の男性が浮気をすることは珍しくありません。相手がイケメンで女性にモテるタイプの未婚の日本男児の場合、若い日本人女性は浮気が「日常茶飯事」だと覚悟しないといけないほどです。

このような浮気症の性格が結婚を機に突然改まるとも思えません。『黄昏流星群』(フジテレビ)などの不倫のドラマが大人気を博していることからも、日本人の不倫に対する関心の高さが伺えます。

物語は、出世コースから突然外されてしまった銀行マンが、旅先のスイスである女性と出会い不倫関係になってしまうというものです。

主人公の男性だけではなく、その妻や娘までが不倫をしていて、ドロドロした関係が次々と展開されます。このドラマの原作は漫画です。これ以外にも現在多くの不倫漫画が人気を博しています。

当然のことながら、実際の生活で不倫をすれば社会的信用を失ったり、離婚問題へと発展して行くリスクがあります。かつて「浮気は男の甲斐性」とまで言われていましたが、昨今の日本社会にはそこまでの寛容さはありません。

現代の日本人は不倫に対して用心深くなっているゆえ、フィクションでは逆に不倫ドラマが流行るのかもしれません。

ではフランス人男性、女性にとって浮気とは何を意味するのでしょうか。

ここでは浮気をするフランス人男性、女性に焦点を当て浮気の現状、浮気の動機などについて紹介します。ここではフランス人が浮気をするという時、彼らが未婚、既婚であるかについては問いません。

フランスにおける浮気の現状

最近のアンケートによれば52パーセントのフランス人男性と48パーセントのフランス人女性が浮気をしたことがあると答えています。

また浮気をした人の75パーセントの人が浮気をしたことを後悔していないと答えています。この数字は50歳から60歳になると84パーセントにまで上昇します。

年齢が上がるにつれて浮気をする割合が増えるということは、暗に、長期のカップルこそ浮気のリスクに直面する比率が高まることを意味しています。

フランスでは、結婚に加え、同性婚、通い婚、事実婚など、カップルを結びつける多様な関係性が存在します。それでも時間が経つにつれて浮気のリスクが高まっていきます。

では自分が浮気をされたらフランス人はどう感じるのでしょうか。

48パーセントのフランス人は配偶者の浮気を許せないと答えていますが、それは彼ら自身が浮気をしない人たちだからでしょう。

これが自分も浮気をしたことがあるフランス人となると、その72パーセントの人が自分が浮気をされても許せる、と答えています。

答えにばらつきがあることから、フランス人にとって浮気の捉え方にはずいぶんと個人差があることがわかります。許容する人も半分、許容しない人も半分、という感じでしょうか。

浮気は性格によるものか、環境によるものか?

セキセイインコは、生涯にわたって一匹のパートナーのみに忠実だそうです。そのパートナーがいなくなったとしても、セキセイインコは新しいパートナーを作らないそうです。

このような忠実さ、というのはセキセイインコのDNAに刻まれています。しかし、私たち人間が生まれた時、浮気をするかしないかがDNAに刻まれているわけではありません。

浮気をするか、しないかという傾向は個人の性格にもよりますが、生まれた環境、それまでの人生をどう生きてきたかにも影響されます。

もともと外見が良く異性にもスマートに接することができる人、何らかの人間的魅力のある人であれば、何もしなくても自然に異性が寄ってくることでしょう。

しかし新しいパートナーと次々に性的関係を持ちたがる人の中には、過去にモテない経験があったり、自分に自信がない人たちもいます。

有名なフランスの哲学者、ジャン・ポール・サルトルは自分の容姿に強いコンプレックスを持ち、若い頃は全くモテませんでした。彼はパートナーとして高名な女流哲学者のシモン・ド・ボーヴォワールを得た後も、多くの女性と浮名を流しました。

サルトルは自分の外見に対するコンプレックスがトラウマとなり、自分の男性としての魅力を確かめるために多くの女性と不倫をしたとも考えられます。

キリスト教と一夫一妻制

法制度を下支えしている道徳、風習をみると、確かに日本よりもフランスの方が浮気に対して厳しいかった歴史があります。

江戸時代まで、日本の上流社会では男子の跡取りを生むという名目から、側室制度がありました。

そして当時の有力な日本人男性には通常正室一人、側室は複数いるのが当たり前でした。

また江戸時代の武士は極端な男尊女卑の考え方を持っていたために、妻を愛することですら恥べきことだった、と言われています。そのために彼らは、女性ではなく同性愛に走ったそうです。

日本では明治憲法発布とともに一夫一妻制という制度が確立しました。つまり日本の一夫一妻制度は、欧米の法制度を取り入れたことに由来します。

それは社会制度としての一夫一妻制であり、日本人はそれを下支えしているキリスト教の宗教観、社会風習まで受け入れたわけではありませんでした。

日本人の宗教観は一部のキリスト教徒を除けば、よろずの神、仏様とともにあります。これらの宗教は二人の異性間の排他的な愛情関係に基づく一夫一妻制度についてなんら強く規制をかけていません。

その結果、明治以後も妾の風習はずっと続きました。現在でも浮気は悪いことだという認識はありますが、それは具体的な宗教上の掟に背いたから悪い、と感じるわけではありません。

浮気をしても相手に悪かったという心理、感情の問題で、道徳的規律を破った自分に対する嫌悪感や神に対する罪悪感を意味するわけではありません。

イスラム教は現在でも一夫多妻制を敷いています。歴史的に見るとユダヤ教も一夫多妻制を受けいれた時期がありました。

キリスト教はイスラム教やユダヤ教と同じルーツから派生しているためこれらはすべて一神教です。

しかし他の二つと異なり、キリスト教のみが一夫一妻制を前面に掲げました。それは、キリスト教が女性も含めて、全ての人が神の前に平等という考えを徹底させたからです。

マチューは聖書の中で「一生涯(配偶者に対する)忠実心」を解いています。また「自分の妻を嫌い、別の女性と再婚することは、不貞を働くことと同じことだ」と書いています。「結婚した男女はもはや二人ではなく、(4つの手と4つの脚で)一つの体になる」とも書いています。

その結果愛の宗教、キリスト教の要に一夫一妻制がありました。それは夫婦関係において女性の立場を保護するものだったと言えるでしょう。

同時に中世から1970年ぐらいまで、フランスの女性は父、夫の強い支配下に置かれました。

ナポレオン法典に象徴されるような社会、政治的な男尊女卑の関係を補完したのが、キリスト教の教える精神的平等に基づく、一夫一妻制の夫婦愛だったといえましょう。

結婚=愛の意味すること

中世以来、フランスではキリスト教の精神的影響の下で一夫一妻制の伝統を育んできました。ところが今日多くのフランス人はキリスト教から離れて世俗的な価値観を持つようになりました。

そのきっかけとなったのが1968年の5月革命です。それ以来フランスでは結婚についての考え方が根本的に変わりました。

それまで結婚は家父長制、つまり社会に秩序や安定をもたらすための政治的、経済的ユニットとみなされていましたが、5月革命以後、結婚は純粋にカップルの愛情の受け皿となったのです。

フランスでは今日愛で結ばれて結婚することが当たり前になりましたが、その愛とはキリスト教文明の遺産です。現代フランスでは、結婚における唯一無二の夫婦愛は絶対視される傾向にあります。

このことは、キリスト教の儀式、社会的影響が衰退してしまった今日、フランス人の心の中にこそキリスト教の愛が生きのびたことを示しています。

フランス人はなぜ浮気に走るのか

では結婚=愛となった今日、既婚者のフランス人は同時に二人の人を愛することは可能なのでしょうか。

人間とは繊細で、複雑なものです。一夫一妻制の宗教的伝統があろうと、恋愛結婚が一般化しようと、全ての人を一夫一妻制の型に押し込んでしまうことはできません。

浮気をしてしまうフランス人は当然存在します。彼らは言うでしょう。二人の人を全く同じように愛することはできない、と。

日常生活の中で人は夫を愛し、子供を愛し、友人を愛します。これらの愛が複数重なっても問題にはなりません。浮気をする人にとっては、これと同じ理由から、複数の異性への愛が重なることもあり得ると考えます。

浮気を正当化する他の理由もあります。別居しているため浮気をする機会があること、結婚の中に不都合があること、例えばパートナーに対する性的欲望が失われてしまったこと、パートナーと理解し合えないこと、または危ないことをしてみたいという気持ち、毎日の生活に刺激がない、などです。

最初の頃のような激しい情熱をもう一度生きてみたかった、自分がまだ異性にとって魅力のある存在であることをもう一度確かめたい、と言うフランス人もいます。

ここに挙げたフランス人が浮気をする理由は日本人にも比較的理解しやすいものです。

それとは対照的に、日本人にはあまり馴染みのない浮気の動機もあります。例えば、浮気をしたことがあるフランス人の8パーセントの人は、浮気をすることで自分たちのカップルが本当に愛し合っているのか試そうとした、と答えています。

これは、一部のフランス人男性と女性は、夫婦の危機に直面した時浮気によってそれを乗り越えようとしていることを示しています。浮気をした結果彼らは本来のパートナーの重要性を再確認し、彼ら、彼女たちの元へと戻っていきます。

また相手が浮気をしたため、リベンジとして、自分も浮気に走るフランス人もいます。これらは愛しているからこその浮気とも言えますが、日本人にはわかりにくい浮気の理由ではないでしょうか。

現在のパートナーを意識しつつ第三者と浮気をする、というフランス人は、一夫一妻制という道義的規制に囚われるからこそ、浮気をするとも考えられます。

終わりに

フランスには浮気に関する小説、演劇が数多く存在します。それは従来フランスの歴史において長い間結婚と恋愛、愛が全く別物だったことから生じたものです。

20世紀後半まで、一定レベル以上の社会階層のフランス人にとって、結婚とはまずは「制度」でした。結婚は財産、家、社会秩序などと結びつけられていました。

それ以外の庶民にとって結婚とは何よりも生き延びるため手段でした。どちらにしても結婚と恋愛、愛は結びつきませんでした。

1970年代以降フランス人の結婚に対する態度が変化し、浮気に対する態度も変わりました。フランス人は恋愛、愛があるからこそ結婚するようになりました。

そのため浮気をしたことが見つかってしまえば、パートナーの自分に対する信頼、そして自尊心を著しく損なうことになります。理由がどうであれ、今日浮気をするフランス人は、カップルが崩壊してしまうリスクを覚悟しなくてはならないでしょう。

愛と結婚が一緒になっても浮気は起こります。ここで見た通り、その理由は様々です。