ここではフランス人の最新の結婚事情(2017年)について5つのグラフから読み取れる最新の特徴をお伝えします。
結論から言えば、パックスに押されて、フランス人の同性婚を含めた結婚数は減少傾向が続いています。
1)同性婚を含めても、結婚するフランス人の総数は減少傾向にある
2012年以来フランスでは結婚する人の数が減少し続け、2016年は最低数を記録しました。
それから1年経った2017年は結婚する人の数はやや持ち直したものの、結婚するフランス人が減少しつつある、という一般的な傾向には歯止めがかかっていません。
結婚とは、正確には、役所に婚姻届を提出したカップルの数を指します。
2017年フランスでは226.671件の異性間の結婚、そして7244件の同性間の結婚が執り行われました。
結婚が減少傾向を続ける理由としては、フランス人が結婚以外の関係を選択することが増えたからです。下のグラフを見ると結婚をやめてパックス(PACS)を選ぶ人が増加しています。
2017年には186.000件のパックスによるカップルが誕生しましたが、その割合は結婚の80パーセントに迫る勢いです。
結婚とパックスを合計すると以前は優勢だった事実婚(ユニオンリーブル)を上回っています。
まったく何もしないで同棲するのではなく、何らかの枠組みのもとで関係を育みたい、と考えるフランス人が多いことがわかります。
つまりいわゆる「フランス婚」(事実婚)が本国フランスでそれほど人気が高いわけでもない、ことを示しており、フランス人のある種の安定志向が読み取れます。
2)男性同士の同性婚の7パーセントのフランス人カップルでは、二人の年齢差が20歳以上に及ぶ
2017年に7244件の同性婚が祝福されました。これは前年度をわずかに上回った数字です。
同性婚が合法化された2013年以来フランスでは、これまでに合計4万組の同性婚カップルが誕生しました。
その中の男女の比率は男性間の同性婚が21.000件、女性同士の同性婚が19.000件です。
男性の同性婚の数が上回ってはいるものの、それほど差がありません。
先日テレビの対談でピーコさんのボーイフレンドが20歳以上年下の若い男性だ、と話されているのを聞きましたが、フランスでもそうした年齢差の離れた同性婚のカップルが目立つ特徴となっています。
3)フランス人の結婚は晩婚化している
過去20年の間にフランス人の結婚年齢は5歳以上も遅くなりました。1997年にはフランス人女性は平均30歳で結婚しましたが、現在フランス人女性の平均結婚年齢は35歳と晩婚がなりました。
フランス人男性の結婚年齢はかつては32歳だったのが、現在では38歳まで上がりました。
結婚年齢が上昇すると、すべての人生のイベントも遅くなっていく傾向があります。
カップルとして成立するのが遅いと、別れるのも遅くなります。フランスでは同棲をせずに結婚するカップルというのがほとんどいません。
またパックスを交わした後で結婚に移行するカップルもいます。
何年か共同生活をしてカップルとしての適正を見極めてから、結婚に踏み切るカップルもいます。そうなると、必然的に子供を産む年齢も遅れていきます。
同性婚をする男性の平均年齢は44.3歳、女性は39.3歳とこちらは異性どうしの結婚の平均年齢をさらに上回る結果となっています。
このように今日のフランスにおいて晩婚は一大特徴と言ってもいいでしょう。
4)3組の内2組の結婚で、女性が男性よりも若い
多くのカップルでは、女性が結婚相手の男性よりも年齢が若いという特徴はこの20年以来変わっていません。1997年に女性は平均で2.5歳若かったのですが、2017年も2.6歳とほぼ横ばい状態です。
一方、男性のほうが女性よりも若いカップルは全体の23パーセントで、12パーセントのカップルは同い年です。これらの特徴も1997年以来変わっていません。
また年齢差の離れたカップルの割合も横ばい傾向が続いています。10歳以上歳の離れた男性と結婚する女性のカップルは10パーセント、10歳以上女性が男性よりも年上の結婚は2パーセントにすぎません。
フランス人は自由恋愛を楽しむというイメージがありますが、実際にはフランス人は子供を産めるか産めないか、産むか産まないかを見極めてからパートナーを選んでいることが読み取れます。
5)異性婚よりも同性婚のほうが、パートナー間の年齢差が拡大傾向にある
同性婚では配偶者間の平均年齢差が6.1年と異性婚の4.3歳を上回ります。
とりわけ男性どうしの同性婚のカップルでは、平均で7歳以上も年齢が離れています。
同性婚が合法化された2013年当初、男性のカップルで50才、女性のカップルで40才が同性婚の平均でした。
ところが4年だって同性婚に踏み切る年齢も下がってきています。
2017年現在、男性では平均で45才、女性では40才で同性婚に踏み切っています。これは同性婚が社会に根付いてきたことを示しているのではないでしょうか。
最後にー日本の状況と比較して言えること
総じて、社交的な国民性を持つフランス人は、結婚に背を向けつつも、人生を謳歌するにはパートナーの存在が不可欠だと考えています。
フランスでも異性婚においては、男性のほうが女性よりも年齢が高いことが「ふつう」です。
それでも全般的に結婚が晩婚化しているため、女性が子供を産む年齢も上昇しています。
現在先進国の中では、フランスはアメリカとともに比較的高い出生率を保っています。この二つの国では合計特殊出生率が2で、これはなんとか人口を維持するだけの頭数の子供が生まれていることを意味します。
ちなみに日本は1.4で少子化傾向に拍車がかかっています。
フランスの例から読み取れることは、子供が生まれてからの負担を軽減する措置に加えて、不妊治療の財政的援助も少子化に歯止めをかけるための一案である、ということです。
ちなみに、フランスでは社会保障制度の中に制限回数付きの不妊治療が含まれるようになりました。
しかし今後フランス人女性の晩婚化がさらに進んだ場合、いくら不妊治療を促進しても、年齢的な理由から出生率に悪影響を及ぼす可能性も出始めるのではないでしょうか。
同性婚において、フランス人のカップル事情は子供を持つことを前提とした異性婚よりも自由である、という結果が出ました。
それは平均すると、同性婚の平均年齢が異性婚のそれよりも遅いという点に端的に現れています。またパートナー間の年齢差も同性婚の方が異性婚よりも大きいという特徴があります。
これらの同性婚の傾向は、子供ではなく、純粋に人生の最前のパートナーを選び取った結果を示していると言えるのではないでしょうか。
生涯を共にする、と思えるようなパートナーをフランス語でhomme de sa vie, femme de sa vieと言いますが、そのような相手に巡り合うためには、ある程度の人間的成熟が必要になることを示しているのではないでしょうか。
20才以上の年齢の開きがある男性の同性婚のカップルにしても、どちらか一方の人間的成熟度がカップルのバランスの決め手となっていると考えられます。
現在日本でも比較的年齢の高い層の人たちの婚活もあたりまえになりつつありますが、その背景には人間的成熟度に焦点を当てたパートナー探し、といった側面もあると思います。
25才で求める相手と35才で求める相手は多少異なるかもしれませんが、40才を超えたパートナーの場合、その違いはさらに際立っていきます。
40才を過ぎれば、それ以下の年齢に比べ、人生における取捨選択がある程度明確になっているため、自分が望むパートナー像も明確化しています。
しかし、酸いも甘いもかみわけた成熟した女性は子供を産みにくい年齢に達している、というジレンマがあります。
そう考えると、多くのフランス人が若い頃に子供を持ちつつも、その後別れと出会いを繰り返す理由も透けてみえてきます。
子供かパートナーシップのどちらの充実を望むか。
現代のような変化の多い世の中で、一度の結婚で求めうるものをすべて同時に手中に入れられる人というのは、相当ラッキーな人だと言えるでしょう。
フランスフィガロ紙より https://apc01.safelinks.protection.outlook.com/?url=http%3A%2F%2Fwww.lefigaro.fr%2Factualite-france%2F2019%2F02%2F26%2F01016-20190226ARTFIG00192-le-nombre-de-mariages-en-france-reste-historiquement-bas.php&data=02%7C01%7C%7Cd6d7e2d7fd3349ca5b9508d6f21f58b0%7C84df9e7fe9f640afb435aaaaaaaaaaaa%7C1%7C0%7C636962613788349421&sdata=uJqwUzMykFMfN5X7ar2hQOxK4fdZhW8E4zAzgE6YdKg%3D&reserved=0