フランス人は頑張る、頑張らない?

頑張る」という言葉には日本的な響きがあります。

国語辞典によれば「頑張る」とは「忍耐して、努力し通す。気張る」を意味します。ガンバリズムという造語もあり、これは「頑張り抜くことを信条とする」ことを意味します。

確かに日本社会が高度経済成長を遂げていた一昔前、土曜日に働くことが当たり前だった時代、日本人は老若男女「頑張ること」を信条としていました。

そしてモーレツに「頑張る」時代の後、「ゆとりの時代」が来ました。

「ゆとり」とは主に小学校、中学校の教育制度に使われた言葉でしたが、この時代は「頑張る」ことに対して日本人が見直しをかけた時代、と言えるでしょう。

そして昨今の日本では、「頑張る」ことに対して様々な見方があります。人それぞれです。

経済的にピークに達しており、緩やかに下降しつつある現在の日本社会において、確かに「頑張る」という行為は不釣り合いな面もあるかもしれません。

意識の面では多くの日本人がそれほど頑張らないで生きて生きたい、と思う今日この頃ですが、無意識の面ではやはり日本人は頑張っているのではないでしょうか。

頑張ると勝ち負け

では私たち日本人は、どんな状況の時に頑張ろうと思うのでしょうか。

例えば結果的に負けてしまったら、頑張った意味がないのでしょうか。日本人は、そのように思いません。

日本人は負けてしまっても、最後まで歯を食いしばって頑張り抜く姿に美を感じる国民だからです。権力を上り詰め、栄華を極めてものの、あっという間に敗退してしまった平家のあり方に生き方としての美を感じます。

浦島太郎に抵抗した、鬼たちが最後まで「頑張って」戦っても負けてしまう、そんなところにも日本人は美を感じてホロリときます。

そう考えると、日本人は結果にこだわらない「頑張り」に価値を置く傾向があるのではないでしょうか。頑張るプロセスと結果を別に考える、と言ってもいいかもしれません。

私たち日本人は災害の国に生きており、頑張っても頑張ってもその結果が崩壊してしまう、という現実を何度も経験しました。そのような長い歴史を経て、結果を求めない頑張り、というのは無意識のうちに私たちのDNAに叩き込まれて行ったのでしょう。

フランス人は頑張らない?

「頑張る」という視点からフランス人を見ると、日本人と正反対であることが理解できます。フランス人が頑張らない、ということではありません。

ただフランス人は結果の出ない頑張りには闘志を燃やさないようです。「頑張る」というプロセスのみには美を感じない国民と言ってもいいかもしれません。

実際歴代のフランスの国家元首たちは、フランス人が頑張らない国民であることを何度も嘆いています。

ナポレオン:「フランス人の性格として、不満なことがあると、すぐに大げさになり、不平不満を言い、そして全てを歪めて解釈してしまう」

第二次世界大戦中に「自由フランス」のリーダーとして活躍し、戦後フランス大統領として「フランス人の父」となったド・ゴール将軍はフランス人について次のように書いています。

「フランス人は子牛だ。」

これだけでは何の意味かさっぱりわかりません。実はド・ゴール将軍は次のことを言いたかったと考えられます。

フランス人は深く考えないまま、いい加減に上からの指示を受け入れた結果、(第二次世界大戦中に)ナチス・ドイツに占領されてしまった。その結果屠殺場行き、というのは大変残念だ、という意味です。

このように二人の国家元首が、フランス人の国民性として、受け身で、主体性がないことを批判しているのは興味深いですね。

頑張るフランス人=エリート

そうは言ってもフランス人が頑張らない訳ではありません。ここで、フランス人も頑張ること、しかしフランスでは頑張るという行為がそれほど評価されないことを、区別しなければなりません。

ではフランスではどんな人が頑張るのでしょうか。

フランスは日本以上に学歴社会です。フランスには、大学とは別のエリート養成校であるグランゼコールが存在します。

グランゼコールを卒業した人たちはエリートコースを歩むことができますが、そのグランゼコールに入学するフランス人は、間違いなく頑張らなくてはなりません。

ところが一度グランゼコールへ入学してしまうと、これらの秀才のフランス人たちは、自分たちが頑張ったことを忘れてしまいます。いや、正確に言えば頑張った事実を自分にも他者にも隠します。

頑張ったという過去に変えて、彼らは自分たちが「才能」「知性」を併せ持つ優秀なエリートである、という強いプライドと自負を持つようになります。

フランスは実力主義の社会

このように一部の頑張るフランス人が学歴社会で成功した暁に、彼らは強いエリート意識を持つようになります。

では頑張ったフランス人は、一度成功してしまうとそれまでにモーレツに頑張ったことを忘れてしまうのでしょうか。

それはフランス社会が、経験よりも実力を重んじる社会だからです。アメリカ社会ほどではないにしても、フランスも実力主義、才能主義を採用しているからです。

長い時間コツコツ頑張るよりも、才能、実力による短期決戦の方が好ましい。だからフランスでは比較的若い人が社会のリーダーになってしまいます。

このような政治文化だからこそ、ナポレオン、マクロンなどの40歳そこそこの若い国家元首が誕生しました。そして実力主義の原則が社会に浸透しているため、フランスの国民は老若男女を含めて、この若いリーダーを受け入れます。

フランス人は「改革に抵抗するガリア人?」

西ローマ帝国が西ヨーロッパ一帯を支配していた時代、フランスの住民はガリア人と呼ばれていました。この時代にフランス人が残した遺跡のことは今でも「ガロ・ロマン」、つまりローマ化したガリア人の遺跡と呼ばれています。

最近マクロン大統領はそんな古代のフランス人の呼び名を取り上げて、フランス人をして「改革に抵抗するガリア人」と呼びました。

日本と同様、フランスも財政が年々悪化しています。税制改革無しには、この財政悪化を乗り切ることはできません。

結果が伴わない事柄に頑張れるか、頑張れないか、それが日本人とフランス人の税の値上げに対する態度にも微妙に影響を与えています。

日本では最初3パーセントだった消費税が今年10パーセントに値上がりすることが予定されています。

日本国民はそのことについて嫌だと思っていますが、この消費税率の値上げを受け入れました。少なくとも暴動などを起こすことはありませんでした。

一方フランスでは、マクロン大統領が、環境に配慮してディーゼル車の数を削減するために、燃料税の値上げを発表しました。

その結果、フランス庶民が怒って黄色いベスト・デモを引き起こしてしまったことは。日本でも報道されました。マクロン大統領は、このデモを念頭に置いて、フランス人のことを「変化に抵抗する」ガリア人と評したわけです。

以上のフランスの状況から日本を見る見ましょう。なぜ日本人は消費税値上げに反対の声を挙げないのでしょうか。

一つの答えとして、日本の国民が結果について問わずに「頑張る」というプロセスに美を見出す国民だからかもしれません。だから消費税の値上げに対しても、結果には期待せず頑張りを発揮していると考えられます。

一方フランス人が燃料費値上げを受け入れないのは、彼らがそれが結果に見合う努力なのかを計算した結果、見合っていないと判断したと考えられます。

フランス人の国民性に関する名言

最後にフランス人の国民性についての名言を紹介にして、このブログを終わることにします。

あ、フランス人だ。彼らはどんな風にもなびく。(原理原則がなく、なんでも受け入れてしまうという意味)(ウイリアム・シェイクスピア)

フランス人は早口で話すが、行動は遅い(ヴォルテール)

ドイツ人の長所は、時間を有効に使う点だ。フランス人の才能は、(楽しく過ごすため)時間が過ぎるのを忘れてしまうことだ。(スタール夫人)

イギリス人はテーブルマナーを世界中に伝えた。しかしそこで食べるのはフランス人だ。(ピエール ダニノワ)

フランス人は外国人のことが嫌いだ。貧しい外国人はもちろん嫌いだ。フランス人は金持ち外国人を観光客と呼ぶ。(フランソワ・ジロー)