「オンラインの出会い」から読み取れるフランス人男性の恋愛観ー彼らは出会いに何を求めているのか

縁という言葉は極めて日本的な概念です。この言葉の由来は仏教で「巡り合わせ」「前世からのつながり」を意味します。また男女の不思議な出会いのことを「縁は異なもの」と言います。

これらの縁をめぐる言葉には「一期一会」同様一つ一つの出会いには人智を超えた計らいがあり、出会いというのはそもそも神秘的なものだというニュアンスが込められています。

フランスは元来キリスト教の伝統を持つ国ですから、ご縁というのは馴染みのない概念です。ピッタリした翻訳がないためか、日本通のインテリなフランス人に対しては「EN」と言って通じることもあります。そういえばパリには「EN」と言う美味しい日本料理屋さんもあります。

日本通ではないフランス人に対しては「神秘的な力」と言い換えると理解されやすいかもしれません。フランスでも日本でも、その出会いが当人にとって重要であればあるほど、人知を超えた力が働くと考える点は同じだからです。

ではネットを通じた男女の出会いにも神秘的な力は働くのでしょうか。

ここでは、オンラインの出会いを通じて浮かび上がるフランス人男性の恋愛観についてご紹介します。彼らはどのようにネットの出会い、恋愛に向き合っているのでしょうか。そして彼らの恋愛観はITによって変化したのでしょうか。

ネットを通じた婚活の一例:日本の場合

以下はまず東京での話です。

Kanaさんとはスポーツクラブで出会いました。33歳の誕生日を迎え、それまで独身だったKanaさんは「どうしても結婚したい」という、崖っぷちに立たされたような焦燥感、などという言葉では表現できない感覚に襲われたそうです。

そんなkanaさんはほどなくして、ネットの婚活サイトを通じて結婚相手に出会い、トントン拍子で結婚が決まりました。相手は都心のタワーマンションに住む、世界的に名の知れたコンピューターグラフィックデザイナー、E氏でした。

KanaさんはE氏に出会う前に、学生時代から付き合って13年になるK君と長い間同棲していました。Kanaさんは当初K君のことが好きだったに違いありません。でも 33歳になって真剣に結婚を考えた時K君との結婚では自分が望む生活ができない、と気づいたそうです。つまりKanaさんは異なる恋愛観と結婚観の間でジレンマに陥ってしまいました。

はっきり言ってKanaさんは経済的条件のためにK君とは恋愛はできても、結婚はできないと判断を下したのです。そしてKanaさんはK君と同棲を続けながら、インターネットの婚活エージェントに登録しました。

女性の料金は男性ほどではなく「そこそこ」だったそうです。でも女性が「条件のいい」相手に巡り会うためには35歳未満でなくてはならない、とのことでした。彼女いわく「女性は若ければ若いほど良い出会いに恵まれる」ということでした。

Kanaさんいわく婚活エージェントは無理な相手を押し付けるようなことはなく、本人の希望をきちんと聞いてくれるそう。自分の要求をしっかり言っておくことが大切とのことでした。

「私の場合は自分が生まれ育った家庭環境と同じ生活水準の生活を送れることが一番の条件だったの」とのこと。ちなみにKanaさんは神戸の一等地の出身だそう。一流オフィスが立ち並ぶビルの並びに、ご両親は大きなマンションを持っているそうです。

この婚活サイトを通じて、KanaさんはE氏と出会いました。E氏は経済条件において彼女の条件を満たし,また男性として見てKanaさんにとって好ましい相手だったのでしょう。

E氏は「バツイチ」でした。その点についてKanaさんは、日本女性の結婚の平均年齢を4年超えた33歳の自分が年上の男性との結婚を望むなら「バツイチ」も致し方ないと思ったそうです。

E氏は一目で美人のKanaさんを気に入ったことでしょう。それでまずKanaさんはボーイフレンドとの同棲を解消して、一人住まいをすることになりました。

Kanaさんは一人立ちするための生活資金を持ち合わせていませんでしたが、E氏からお金を借りて家具や電化製品をとりあえず揃えて一人暮らしを始めました。

Kanaさんは典型的な美人というのとは違う、フェロモン系の美女でした。新しいパートナーに出会ったばかりの頃のKanaさんはそれまで以上に女性らしさに溢れていたように思います。

天然カールの入ったミディアムヘアの茶髪を三つ編みに編み込んで、真っ白い肌を引き立たせています。

体つきは痩せてもなく、太ってもいない感じで、可愛らしく、同時にセクシーな雰囲気を漂わせていました。

甘えたような、少しかったるいような感じで、私たち女性に対しても話しかけてきます。でもわざとやっているというわけでもなく、彼女の全体像とマッチしており、周りの女性に不快感を与えることはありませんでした。

Kanaさんは一人暮らしになったことで結婚への決意を新たにし、さらに美に磨きをかけるべく、トレーニングに励みました。その後2−3ヶ月後にKanaさんとE氏の結婚が決まり、彼女は結婚式に向けて美しさに磨きをかけるべくラストスパートをかけました。

Kanaさんは自分の美貌、そして女としての魅力をわかっていたのでしょう。彼女は短期決戦で見事にE氏との結婚を決めました。

そんなKanaさんは周囲の若い女性たちにも、ネットによる婚活を強く進めていました。実際に自分の結婚の条件を満たす結婚を決め、都心のタワーマンションに住むことになったのだから、彼女は鼻高々だったことでしょう。

その後結婚して蓋を開けたらKanaさんと彼の関係はどうなったのでしょうか?彼女の恋愛観と結婚観はうまく収斂したのでしょうか。これに対する答えはわかりません。彼女は結婚を機にスポーツクラブをやめてしまいましたから。

フランス人と出会い系サイト

Kanaさんは恋愛と結婚を水と油のように峻別して考えました。ところが多くのフランス人の男性、女性はこうした恋愛観に賛成しないでしょう。

彼らはそもそも婚活と恋愛を区別することはありません。そのためフランスで結婚相手が欲しいと思った場合、「出会い系サイト」に登録することとなります。インターネット、SNSが爆発的に発達したこの10年の間にフランスでも「出会い系サイト」が爆発的に増加しました。

今から10年以上も前に出会い系サイトが始まったばかりの頃、フランスでそれを利用するのはエリート階層の男性のみで、それも浮気相手を見つけるためでした。ところが現在では出会い系サイトも「民主化」されて、あらゆる社会階層のフランス人が利用するようになりました。

ところで「結婚を前提に真剣に付き合わせてください」などというフランス人男性はいません。

「結婚を前提」という言葉には、日本人男性特有の相手の女性を大事に考えており、この関係は遊びではない、との真摯なニュアンスがあります。

ところがフランス人男性の恋愛観からしてみたら、相手に責任を持たなくてはならないなどの発想は理解しにくいでしょう。彼らの恋愛観には「男の甲斐性」などは含まれていないからです。

フランス人男性の恋愛観は、いい意味でも悪い意味でも平等の原則のもとに成り立っています。

楽しいか、楽しくないか、愛し合っているか、愛し合っていないか。こうした当たり前の感情を重視しつつ、責任においても結果においても相互通行的なパートナーシップを築こうとするのが、フランス人の恋愛観です。

とは言っても、フランス人が求める関係は、真面目な恋愛、遊びなど多種多様です。婚活と出会い系が区別されていない以上、軽い気持ちで異性や同性のパートナーと巡り会いたいというフランス人や、長期的なパートナを見つけたいと考えるフランス人が混在しています。

若いフランス人女性と出会い系サイト

2018年現在日本人が結婚する平均年齢は、男性が31歳、女性が29歳です。近年日本女性が仕事を優先するようになり、日本人女性の平均結婚年齢は上昇しました。

これについて日本の少子化がこんなに深刻化したのは日本人女性が働くようになったからだという根強い議論がありますが、フランスの例を見るとそうとも言えないことがわかります。

フランス人の平均結婚年齢は、男性が33歳、女性が31歳で、平均すると日本人よりも遅く結婚していることになります。それでもカップル毎に二人以上の子供を産んでいる計算になります。ちなみに日本では1.4人です。

なんとか長期的な関係を築くためのパートナーに出会いたいと切実に考える、30歳を過ぎた未婚のフランス人女性もたくさんいることでしょう。彼女たちが成功するためには、Kanaさん同様短期決戦で相当な覚悟を持って多くの人に出会う覚悟が必要です。

時には1日2人、3人の候補者と出会い、自分が納得いくまでとにかく新しい人に会い続けるそうです。そして50人100人もの人と出会って、最終的に自分の納得いく相手や「生涯を共にする男性」(l’homme de sa vie)を見つけたフランス人女性、在仏日本人女性もいます。

そういう意味で、ネットによる出会いというのは、ガッツさや行動力を要するため、フットワークが軽くてエネルギーに溢れる若い人向きの出会いの方法なのかもしれません。

そこには登録から、自己紹介、メールの交換、そして実際に出会って話をして相手との相性を見極め、最終的に一人のパートナーを決めていく、という一連のプロセスがあります。

オンラインの出会いはこれまでの出会いと何が違うのか。

従来の出会いのパターンと異なって、オンラインの出会いは本人の意識のみによって自由に始めることができる点が利点です。お見合いのように周りの人を煩わせることもなく、自分が動きさえすれば、ネット検索によって無限の可能性の中から自分のソウルメートに出会うことができる可能性があります。

ところが相手を吟味して、取捨選択していく過程を見ていくと、そこには従来のフランス人の恋愛観が投影されている、と結論づける分析もあります。

以下はフランス人男性、女性がどこで長期的カップルとしてのパートナーと出会うか、について実施されたアンケート結果です。

フランス人男性がパートナーに出会う確率が最も高いのは大学などの高等教育機関で、全体の出会いの40パーセントを占めます。その次が友達の紹介で10パーセントです。

友達というのは社会階層が上がれば上がるほど同じ学校出身となりますから、大卒以上のフランス人男性の二人に一人が自分の出身校に関わる場でパートナーと巡り会うという計算になります。

ちなみに、フランス人は日本人と違って入学式や卒業式などの形式には全く拘りません。それにもかかわらず、日本人と同様卒業してから同窓会などの集まりを大切にする傾向があります。

出身校以外のフランス人の出会いの場としては、公共の場、バカンス先が10パーセント。そして今日ではネットの出会いも10パーセントを占めています。こうして見るとネットによる出会いも、通常の人的ネットワークを通じた出会いのなかった人にとっては、無視できない手段に思えます。

以上のことから、日本などという遠くの国に思いを馳せることができる、つまり教養のあるフランス人男性の出会いの場というのは、実際にはものすごく限られたものであると理解できます。

つまり、日本文化を理解し、日本人との関係を楽しむことができるようなフランス人男性の恋愛観とは、同程度の社会、文化環境の人をパートナーに選ぶ、というものです。

出会い系サイトというのは検索をかけて見も知らない人とのマッチングを可能にするという意味では、こうした教養あるフランス人男性の保守的な恋愛へのアプローチに揺さぶりをかけるものです。

確かにオンラインを通じて、私たちは自分の日常生活のなかにある人的ネットワークの資源の限界を超えて、多くの人に出会うことができます。サイトはこの点を売り文句にしています。

同時にそれは幻想でもあるのです。少なくともこのような新しい技術の出現によって、フランス人男性の恋愛観が大きく変化することはありませんでした。

オンラインを通じて出会った恋愛であっても、その後の振り分けのプロセスにおいては従来の恋愛観が色濃く影響を与えています。つまりフランス人男性はこれまでと同様に、パートナーの選定に当たって社会的同質性を求めます。

まず「自由記入欄」にその人の社会階層がもろに現れます。裕福で、学歴の高い利用者は自由空欄を利用して自己アピールすることに長けています。彼らは自分を魅力的に演出する術を持っているのです。

中産階級以下のフランス人の利用者だと、文章を書くということにまず慣れていません。どうやって自己アピールするか、ということも知りません。そのため文章は自ずと短くなります。

これが写真となると傾向が逆転します。労働者階級では写真はマストです。彼らは相手に写真がなかったら見ない、とすら考えるほど写真を重視しています。

ところが社会階層が上がるにつれて、写真をもろに載せる頻度が少なくなっていきます。ペタペタと写真を貼るという態度はフランスの上層階級の人から見ると「虚栄心の現れ」に映ります。そして彼らは興ざめしてしまうそうです。

実際学歴で見て、中卒、高卒、大卒、大学院卒、と学歴が上がるに連れて、写真を載せる頻度が低くなっていきます。 (60パーセントから45パーセントへ) 一方自己紹介の割合は30パーセントから50パーセントへと上昇していきます。

一方、教育程度の高い、つまり収入も高く、社会的地位も高いフランス人男性は、自己紹介の中のフランス語のスペルの間違いにとりわけ厳しいそうです。彼らは教養を重んじ「良い趣味」を持ったパートナーを求めています。

さらに実際に出会った時、フランス人男性は、自分と同じ社会環境に身を置くパートナーか否かについてさらに厳しく絞っていこうとするでしょう。

関係が進むにつれて、二人は様々な会話をして、時間をある程度かけて、話があう人を選抜していきますが、最終的には社会的に極めて同質なパートナーにたどり着きます。

大手出会い系サイトのEメールを分析すると、カップルになる二人の文化、教育程度は上も下もほぼ同等だった、という結果があるほどです。

フランス人男性、女性はこれまでの恋愛観を保持し、相互の社会階層の類似性、お互いが発する社会的、文化的暗号、儀式、マナーを読み取ることによってのみ、自分にとって最善のパートナーを選んでいくのです。

ある意味、オンラインの出会いという新しい手段によってこそ、従来のフランス人男性の恋愛観が浮き彫りになるとも言えます。そしてメールといえどもフランス人男性、女性は直感、フィーリングを働かせて相手の匂いを嗅ぎ分けようとします。

無味乾燥なコンピューターがマッチングによって自動的に最適の相手を見つけ出すのではないのです。フランス人はAIに振り回されることなく、うまく使いこなしているとも言えます。

以上のことから、フランス人男性の恋愛観に配慮しつつ、日本人女性がフランスの出会い系サイトに登録する際、以下の二つのことが大変重要です。1)ユーモアや個性が溢れた文字による自己PR 2)たくさん写真を掲載するのは興ざめとしても、やはりさりげなく自分の写真を載せた方が好ましいでしょう。

何よりも自分の個性を重視しましょう。そうすることによって、潜在的な相手に対して社会的同質性をアピールしていることになるからです。

最後に

フランス人男性、女性がパートナーを選択する際、社会的同質性が重要だと書きました。

それに対してフランス人男性との交際を望む日本人女性は「なーんだ、私は日本人だし、日本で教育を受けて日本の文化を身につけているのだから、社会的同質性なんてあり得ない」と感じた人もいるかもしれません。

ここでいう社会的同質性というのは、フランス文化、日本文化を超えた、普遍的な教育水準という意味です。日本で大学を卒業すれば、フランスの大学卒の人と同等の社会的同質性となります。

日本で料理について勉強したのなら、必ずしも料理ではなくとも同等な教育を受けたフランス人と社会的同質性があると言えます。フランスは元来日本以上に学歴社会で、学歴が恋愛や結婚に強く影響を与えます。

学歴が恋愛観に含まれるというのは日本的に考えると変な感じがします。現実主義なフランス人は学歴によって、相手の収入などを含めたライフスタイルを厳しく峻別しようとしているのです。

フランス語が理解できれば、格段に相手とのコミュニケーションは高まるでしょう。でもフランス語が話せなくても、英語が話せればそれを共通言語にすればいいし、相手が日本語を話せるなら、日本語で会話をすればいいだけです。

お互いに全く共通言語がないのに、夫婦として成り立っている国際カップルも存在します。

私が出会った、パリに住む日仏カップルで、日本人の奥さんがアメリカの超一流の音楽大学院を出たプロの音楽家というカップルがありました。

彼女はアメリカ滞在の後、フランスのオーケストラに就職しました。そこで彼女以上に音楽家としての実力があるフランス人男性と出会い、結婚しました。

この日本人女性はそれまで全くフランス語を勉強したことがありませんでした。フランスに住むようになってからも、音楽を奏でることが仕事ですから、フランス語を話す必要はありませんでした。二人ともプロの音楽家だったので、二人の間で相通じるところがあったのでしょう。それでこの日本人女性はフランス人男性と結婚したのちもフランス語が上達しませんでした。

音楽家としては超エリートのこの日本人女性は、しかしフランス語が話せないため、日常生活においては、夫に対しても周囲に対しても何かを説明したり、話をしたり、アピールしたりということができない状況でした。

フランス人男性は一般に一緒に会話を楽しめて、自立して自己主張もできる女性をパートナーとして求める、と言われます。

しかしこのフランス人男性は、妻が友達たちとの集いでおしゃべりに参加できない、そもそも夫婦の会話すら成り立たちづらいことについて気にしていないようでした。

ただそんなフランス人男性でも、経済的、文化的な同質性では妻と一致していたことになります。そして彼女の日本人女性としての嗜み、資質、ライフスタイルなども彼の恋愛観とマッチしていたのです。