身長の低いフランス人男性は恋愛市場で不利になってしまうのでしょうか。ここではフランス人男性の平均身長について紹介した後、権力の頂点に立つほどのパワーを持った3人のフランス人男性、ルイ14世、ナポレオン、サルコジ前大統領の身長についての小話などを交えながら、フランス人男性と平均身長、恋愛への影響について考えてみます。
フランス人男性と身長について 身長の高い低いは階級と関係があった?
フランス人といえば恋愛です。女性雑誌などで定期的に特集が組まれているので、日本でもフランス人=恋愛の達人というイメージが定着しているのではないでしょうか。
このイメージを絵に描いたような雑誌の特集号が組まれました。Ku:nelという雑誌による『フランス人女性101人のおしゃれ・ライフスタイル公開』(2018)です。
ここには、おしゃれやファッションの仕事に関わる多くのクールでスタイリッシュなフランスの中年女性が紹介されています。彼女たちはおしゃれに加えて、恋愛についても独自の視点から語っていて、読み応えがあります。『愛を保つために別居している』、『3人のパートナーとの出会いと別れを経験した』、『恋愛至上主義には50歳で終止符』などと発言し、酸いも甘いもかみ分けた大人のフランス人女性として、恋愛や人生をマイペースに謳歌している様子が伺われます。
このような特集が組まれる、ということは、日本女性の中にこのような生き方に憧れを持つ人がいる、ということの裏返しです。こうした記事を読む際に注意したいのは、フランスといえどもこうした生き方がマジョリティではない、ということです。フランス人でも、結婚して子供もいて、恋愛感情は薄れてしまったけど家庭を優先する女性もいれば、恋人のいない独身の女性だっています。
フランス人のマジョリティについて紹介しても、それは日本女性の悩みや関心と似ているために、逆に記事にしづらく、またそのような雑誌を作っても部数を伸ばせないのでしょう。日本では、非日常的な「フランス」について仮想イメージを膨らませれば膨らませるほどに、フランスに関する特集号も売れる、という構造があるからです。
では、これらの生き方が全くの例外か、と言われるとそうとも言えません。日本とは違って、年齢を気にせずに、思い立ったら自由に行動できてしまうのが、フランス社会の懐の深いところで、平たく言えば、なんでもありだからです。小さいところで言えば、日本みたいにこの年齢だからこの服装はダメ、ということはありません。年甲斐もなく恋愛なんて、などとも言われませんし、ファウンデーションすらつけない中年の女性もたくさんいます。春から夏にかけて、パリの公園では、人目を全く気にすることなく、多くの中年男女が水着姿で、堂々とぜい肉を見せながら、日向ぼっこをしています。そういう意味では、この雑誌の女性たちも、フランス社会の一面であるには違いないのです。
ここではなぜフランス人女性が独特な生き方をするようになっていったのかについて、フランス人男性の平均身長と絡めて考えていきます。
ある統計によれば、フランス人男性の体格は、フランス人女性に比べて、平均身長が10センチ高く、平均体重は11キロ重たいそうです。そうすると大半のカップルでは男性の方が女性よりも身長が高いことが当たり前、ということになります。
ここで注目したいのは、フランス人男性の身長、というのは階級、つまり生まれや職業を含めた社会階層とも相関関係がある、という事実です。では、身長が高く、スタイルもいいフランス人男性はどのようなバックグランドを持つ傾向にあるのでしょうか。
平均身長 過去200年の間にフランス人は大きくなった
国が豊かになると国民の背も高くなる、というのは世界的傾向ですが、フランス人も国が豊かになるにつれて平均身長も高くなっていきました。フランス人男性の平均身長は、産業革命が始まる前の1830−1850年ごろには1メートル62センチだったのが、それから100年後には1メートル72センチにアップしたのです。
また20世紀の100年間にもフランス人男性の平均身長は随分伸びました。現在70歳以上のフランス人男性と20歳のフランス人男性を比べても、5センチぐらい平均身長が違います。もちろん若くなるほど平均身長は高くなります。
意外に知られていないのが、職業によっても平均身長に違いがある、という事実です。実際一番平均身長が低いのは、雇われ労働者として農作業をしている人たち、という結果が出ています。彼らは自分の土地を持っていない、つまり一国一城の主人ではないこと、農業に携わっている、という二つの理由からなかなか結婚相手を見つけることができません。
一方で、一番身長が高いのは大学生、2番目は医者、弁護士などの自由業、そして3番目は会社の社長、となっています。都会に住み小さい時からの食生活がリッチで、バカンスに勉強に思う存分励むことができる環境にあった人たちの方が身長が高い傾向にあります。
また日本人から見ると意外な感じがしますが、フランスでは『都市の環境』が健康増進に有利に働きます。都会に住む人の方が田舎に住む人よりも身長が高い傾向があるのです。
都市には馬や豚がうろうろしていない。住居環境も整い、貧しい地域も消滅しつつある。その結果都市では衛生面でも整備が行き届いているので、感染症などにかかる率が格段に低く、病気にかかりにくいのです。
また都市に住み教育の程度が高くなるにつれ、健康についての知的関心も高まり、より健康的なライフスタイルを求めやすい、という傾向もあります。
パリの16区(いわゆる絵に描いたお金持ちが住む場所ですね)を歩いていて一番に気づくのは、歩いているパリジャンが身長が高く、それだけではなくスタイルがとてもいいことです。ジムなどで体を鍛えているのでしょう。太っている人はおらず、みんなすらっとして身長が高く、猫背な人もあまり見かけません。
私たち女性が無意識に身長が高い男性を求める傾向があるのは、単に見たくれの問題だけではなく、このような文化的背景について何か直感的に感じるものがあるからかもしれません。
フランス人男性の平均身長と権力の因縁
マス・メディアは、身長が低い男性と高い女性のカップルについて取り上げることがあります。典型的なのはトム・クルーズと元奥さんとか、片岡愛之助と藤原紀香などです。
日本でよく取り上げられるのは、大スターの男性がトロフィーワイフとして身長が高く美しいモデルの女性と結婚したケースではないでしょうか。実際トムクルーズの身長は170センチ前後で、身長が低いという訳ではないのですが、選ぶ女性の身長が高いことからなぜか、身長が低い男性として話題になりましたよね。
日本では女性の方が身長が高いカップルについて話題になる時、パートナーの男性は大抵が俳優です。身長が低い政治家と高い美女とのカップル、というケースは思い浮かびません。
今までモデル級の身長が高く、美しい奥さんを持った日本の首相など存在しなかったのではないでしょうか。それはなぜでしょうか。私たちはそんな女性を選ぶ政治家を政治家として信頼しないかもしれません。またそれは、私たちがフランス人やアメリカ人ほどに人物としての政治家に夢を託していないからかもしれません。
アメリカではあのトランプ大統領だって、奥さんは美しく元モデルだったのです。しかし身長のことで話題になることはありませんでした。それはトランプ大統領の身長が190センチだったからです。
意外なことですが、フランス人は、身長が低い男性と高い女性のカップルとして、何よりも政治家の例を引き合いに出します。それはフランスでは国家権力の中枢に位置する男性の身長は高くなくてはならない、という無言の掟があるだと考えられます。
フランスでは絶対王、皇帝、強い大統領など、唯一の権力者が強大な権力で持って国を一方的に治めるということが珍しくありませんでした。その際、国家のリーダーは全ての人の上に立ち、そして全ての人を見下ろす立場でなくてはならないのです。そのために暗黙の了解として、国家リーダーは身長が高い必要があるのです。
フランスにおける権力者の身長とハイヒール:ルイ14世
当たり前のことですが、現実には、国家リーダーが必ずしも身長が高い訳ではないのです。そのため、ハイヒールが誕生しました。つまり身長の低い権力者の身長を補って国家権力を完全なものとするために。。。。
その典型的なケースがヴェルサイユ宮殿に一時代を築いたルイ14世でした。彼は絶対王として、全ての権力を手中にしました。しかし彼の身長は163センチで周囲を囲む貴族たちよりも低かったのです。
それでルイ14世は常に10センチのハイヒールを履いていたと言われます。ルイ14世のハイヒールはデザイン的な特徴がありました。ヒールと靴裏が赤かったのです。
染料も含めこのようなハイヒールを作るには相当お金がかかりましたが、瞬く間にヨーロッパ全域の上流社会でこの靴が流行したといいます。1670年代にルイ16世は彼と彼の側近のみ赤い靴を履くことを許される、とお触れを出したそうです。
ちなみにその後女性も男性の間で人気のあったハイヒールを真似するようになり、現在のようなハイヒールが確立していきました。
謎に包まれたナポレオンの身長
その後、フランス革命が勃発し、混乱の10年を経たのち、ナポレオンが再度フランスに絶対王政を彷彿させるような帝国を築きました。地中海に浮かぶ小島コルシカに生まれた下級貴族のナポレオンは小男でそのことでコンプレックスを持っていた、と語り継がれています。
ところがこれは事実ではありません。実際ナポレオンは1メートル69センチありました。当時のフランス人男性の平均身長は1メートル65センチでしたから、ナポレオンは平均以上でした。
それなのに、ナポレオンは小男だった、という伝説が定着してしまったのはなぜでしょうか。それは彼を囲んだお付きの兵士たちの平均身長が相対的に高かったからです。彼らは最低でも1メートル70センチ以上の身長でなければならなかったそうです。そのためお付きの兵士に囲まれたナポレオンは相対的に身長が低く見えたのです。
それが絵画などに残されたために小男のナポレオンのイメージが定着していったのです。ナポレオンの一人目の配偶者はジョゼフィーヌという美貌の女性でした。彼女の方が身長が高かったことを揶揄する絵も残っていますが、実際どうだったかはわかりません。
「サルコジ前大統領の身長」がGoogle検索で筆頭に
最近ではサルコジ前大統領がカーラ・ブルーニという美しく身長の高いモデルと再婚して話題になりました。彼女の身長は176センチで、サルコジ前大統領よりも背が高く、目立ちました。
その後、サルコジ前大統領が身長が低いことにコンプレックスを持っているのではないか、という噂がたちました。実際国家主席が一堂に会する場で集合写真を撮るとき、当時大統領だったサルコジ氏はよく背伸びをしていたそうです。そのような世界の権力者が集う場所でサルコジ氏は密かに185センチの当時のオバマ大統領を意識していた、とも言われています。
その結果、その後の大統領再選のための選挙直前のグーグルの検索No1キーワードは当時のサルコジ大統領の政策など、政治に関わる事柄ではなく、ズバリ『サルコジ、身長』だったそうです。
サルコジ前大統領の身長については複数の説があります。グーグルでは1メートル65センチと出てきます。他のソースによれば1メートル68センチだそうです。ところが実際はサルコジ前大統領のあとで当選したオランド前大統領と並んで立った時、なんと両者は同じ身長だったそうです。
ちなみにオランド前大統領の身長は1メートル70から74センチと言われており、これで、サルコジ前大統領の身長が実際よりも低く見積もられていたことがわかりました。サルコジ前大統領がモデルの奥さんよりも身長が低かったこと、常に身長を高く見せようと背伸びをしたり、台に乗ったり、という姿がしばしば目撃されたために、サルコジ前大統領は背が低い、というフランス人の権力者としては好ましくない噂が立ってしまった、ということがことの真相のようです。
確かにyou tubeなどで検索するとサルコジ氏が背を高く見せるための努力を怠らない瞬間がバッチリ映像化されています。全ての人よりも頭一つ飛び出ているのがフランス人の国家元首としてのあり方の特徴なのです。日本では「出る杭は打たれろ」と叩かれてしまいますが、フランスでは逆に信頼を得るのです。他の人よりパワフルでなくてはならずそれを象徴するのが彼らの平均身長です。
以上のことから、男性が女性よりも頭一つ身長が高い、という一般的な傾向は、見た目が好ましい、で片付けていい問題ではなくなります。この差は男性が亭主関白であることも示唆しうるからです。平均身長の話から類推する限り、フランス人男性が女性に寛容だ、という説には根拠がない可能性があります。
フランス人男性と平均身長:恋愛する時に気をつけたいこと
日本とは違い、フランスでは、知識、文化、育ちの違いがもろにその人の生き方に大きく跳ね返ってきます。フランス人はどう、こう、と全体的に論じれない理由がここにあります。日本人以上に個人差が激しいのです。
そのような中で、身長の低いフランス人男性は恋愛市場で不利な立場を被るのでしょうか。恋愛は全てを凌駕します。男性の身長が低い、というのも、愛し合う当人同士の間ではなんら障害にはなりません。サルコジ前大統領は愛情を優先して自分より身長の高いモデルと結婚しました。
同時に、フランスにおいて、男性の平均身長は、権力の象徴でもあるということを指摘しました。身長が高くすらっとしてかっこいいフランス人男性のイメージというのは、社会階層も高く、経済的にも潤っており、他の人を見下ろすことができる権力も持っているような男性である可能性があります。そんな男性は魅力的に見えます。しかし実際そのようなパワフルな男性と付き合ったり結婚したら女性として幸せか、というと必ずしもそうとは限りません。
ナポレオンとの間に子供ができなかったジョゼフィーヌは、最終的には離婚を受け入れました。サルコジ前大統領は、リビアのカダフィ大佐から違法なお金を受け取った疑いを晴らすために、現在裁判所で戦っています。モデル、歌手、そして華やかな大統領夫人としてメデイアに登場していたカーラの美しい姿を見かけることはめっきりなくなりました。
国家元首と同レベルでは語れないにせよ、人並み以上の社会的影響力を持つ身長の高いイケメン男性と付き合った場合でも「恋愛を楽しむ」だけではすまなくなっていくでしょう。パートナーの生活リズムに合わせ、常に物理的、心理的なサポートを心がけねばなりません。オフィシャルな関係ならば、パーティーなどのお義理のお出かけにも付き合わなくてはなりません。常に外見、内面を磨く努力を続けつつ、周りの女性にも目を光らせなくてはなりません。
フランスの国王は正妻を愛さず、寵姫が影で威力を発揮しました。美しい寵姫たちは自分の欲求を横に置いて、愛する相手の思惑通り動くことによってのみ寵愛を受けることができたのです。そして寵姫とは24時間の仕事だったのです。ナポレオンの妻ジョセフィーヌは夫に全面的に従うことによって逆に夫をコントロールし、愛を勝ち取ったと言われます。
今日のフランスでは、女性の権利意識が高まったため、パワフルな男性の家と外の二重生活を受け入れるフランス人女性はほとんどいなくなりました。それでも男性側が愛する女性に期待する事柄は、今も昔もそんなに変わらないでしょう。例えば先に挙げた雑誌の中で、何人かの女性は「浮気をされて最初の夫との別れに至った」と告白しています。このような文化的背景があるからこそ、現代のフランス人女性は自分自身が働いて自立するとともに、別居、通い婚、同棲、パックスなどの中から自分にあったスタイルを選択し「身の丈にあった」気のおけないパートナーとの関係を楽しんでいる、と言えます。
あなたは自分のパートナーに何を求めますか。